ある夜、ふっと部屋の明かりが消える。
冷蔵庫の音が止まり、テレビが消え、スマートフォンの画面だけが、暗闇のなかでやけに明るく感じられる。
停電は、地震や台風のあとだけでなく、雷や、ちょっとした設備の不具合でも起こります。
短時間で復旧することがほとんどですが、長引けば、暮らしのリズムは静かに揺らいでしまうものです。
完璧な備えを目指す必要はないと思っています。
ただ、いざというときに「あって良かった」と思えるものが、家にいくつかあるだけで、夜の静けさはずいぶんと違って感じられるはずです。
今日は、停電のときに役立つ、家庭で持っておきたい7つのものをご紹介します。
すべてを一度に揃える必要はありません。
ご家庭の状況に合わせて、ひとつずつ取り入れてみてください。
1. LEDランタン ―― 部屋全体を照らす灯り

停電になって最初に感じるのは、明かりのありがたさです。
スマートフォンのライトでも、最低限のことはできます。
けれど、片手がふさがってしまうことや、電池の消耗が早いことを考えると、やはり「部屋全体を照らせる灯り」がひとつあると安心です。
その役割を担ってくれるのが、LEDランタンです。
選ぶときに見ておきたいのは、明るさ(ルーメン数)と、点灯時間です。
リビングやダイニングで使うなら、200〜300ルーメン程度のものがちょうどよく、家族が集まる空間をやさしく照らしてくれます。電池式なら、単三電池で動くタイプが汎用性が高くおすすめです。
最近は、見た目が温かみのあるデザインのものも増えています。
普段はインテリアの一部としてリビングに置いておき、いざというときに灯す。
そんな使い方ができると、防災用品が「特別なもの」ではなく「暮らしの中にあるもの」として自然になじんでいきます。
灯りがあるだけで、人は驚くほど落ち着くものです。
夜の停電が長引いたとしても、ぽつりとひとつ灯る光があれば、家族との時間は穏やかに過ぎていきます。
停電時の暗さへの備えは、住まいの安全対策ともつながっています。
センサーライトなど住まい全体の備えは「家族を守る、住まいの防災・ 防犯の基本」にまとめています。
2. モバイルバッテリー ―― スマホの電源を絶やさない
停電のときに、明かりと同じくらい大切なのが、スマートフォンの電源です。
家族との連絡、災害情報の確認、天気や交通の最新情報。
今のスマートフォンは、停電下において「情報の窓口」として欠かせない存在になっています。
その電源を絶やさないために、モバイルバッテリーは欠かせません。
選ぶときの目安は、容量です。
スマートフォンを2〜3回フル充電できる10,000mAh前後のものが、家庭用として扱いやすい大きさです。
家族が複数人いるご家庭なら、20,000mAh程度の大容量タイプがひとつあると、より安心感があります。
普段から持ち歩くものを、家庭用にもう一台用意しておく。
そんなふうに「日常使い」と「備え」を兼ねると、いざというときに充電切れで慌てることもありません。
定期的に充電状態を確認することも、モバイルバッテリーを使ううえでの、小さな習慣です。
3. 手回し充電ラジオ ―― 電源不要の情報源
スマートフォンが使えるうちは、情報源に困ることはありません。
けれど、停電が長引いて電波が不安定になったり、モバイルバッテリーの残量が心もとなくなったりすると、別の情報源があると心強く感じます。
そこで持っておきたいのが、手回し充電ラジオです。
ハンドルを回すだけで発電できるタイプなら、電池がなくても情報を得られます。
多くのモデルには、LEDライトやスマートフォン充電機能が一体化されていて、ひとつ持っておけば複数の役割を果たしてくれます。
ラジオの良さは、「ながら」で情報を得られることです。
明かりを灯し、家族と話しながら、ラジオを小さく流しておく。
画面を見つめ続ける緊張感がない分、停電の夜を少しだけ穏やかに過ごせます。
電気に頼らない情報源をひとつ持っておく。
それは、暮らしの安心感を底上げしてくれる備えです。
4. 保存水・非常食 ―― 冷蔵庫が止まっても食べられるもの

停電が長引いたときに気になるのが、冷蔵庫の中身です。
電気が止まってしまうと、冷蔵庫の食材は数時間〜半日ほどしか保ちません。
冷凍庫に頼っていた食事計画も、一気に成り立たなくなります。
そんなときに頼りになるのが、常温で保管できる保存水と非常食です。
保存水は、ひとり1日3リットルを目安に、家族の人数×3日分を備えるのが基本です。
非常食は、レトルトのご飯やお粥、缶詰、フリーズドライのスープなど、温めなくても食べられるものを中心に選ぶと、停電時にも対応しやすくなります。
普段から少しずつ食べながら、減ったぶんを買い足していくローリングストックにしておけば、賞味期限切れの心配もぐっと減ります。
「特別な備え」ではなく、「いつもの食卓の延長」として備えておくこと。
それが、長く続けられる食の備え方です。
5. カセットコンロ・ボンベ ―― 温かいものを食べる手段
停電のとき、IHコンロは使えなくなります。
電気で動く調理家電も、すべて止まってしまいます。
そんな状況でも「温かい食事」を作ることができるのが、カセットコンロです。
電気もガスのインフラも必要とせず、ボンベさえあればお湯を沸かしたり、簡単な調理ができたりします。
普段の鍋料理にも使えるので、特別な防災用品ではなく、日常的な道具として家にひとつあると重宝します。
ボンベは、ひとり1日1本を目安に、家族の人数×3日分ほどを備えておくと安心です。
温かい食事は、お腹を満たすだけのものではありません。
停電のなかで湯気の立つ一杯を口にしたとき、人はふっと、いつもの暮らしを取り戻す感覚を得るものです。
「温かいものが食べられる」という小さな安心は、思っている以上に、心の支えになります。
6. 携帯トイレ ―― もしもの衛生を守る
停電だけでなく、地震や災害の影響で断水が起こったとき、いちばん困るのが「トイレ」です。
水洗トイレは、電気と水のどちらかが止まると使えなくなることがあります。
そんなときに役立つのが、携帯トイレです。
便座にセットするタイプの袋と、凝固剤がセットになっているものが一般的で、一回分ずつパックされているため、扱いも難しくありません。
備える数の目安は、ひとり1日5回×3日分程度。
家族の人数で計算すると、思ったよりも多くの数が必要だと気づく方もいるかもしれません。
「トイレの備え」は、つい後回しにしてしまいがちな項目です。
けれど、実際の災害時には「最初に困るのはトイレだった」という声がとても多く聞かれます。
普段は意識しない部分にこそ、丁寧な備えが効いてくる。
そんなことを、教えてくれる備えです。
7. 保温シート・使い捨てカイロ ―― 体温をまもる
冬の停電で、もっとも気をつけたいのが「冷え」です。
エアコンや電気ストーブが使えなくなると、室温は思った以上に早く下がっていきます。
窓の多い部屋では、体感温度がぐっと低くなり、長時間過ごすのが辛くなることもあります。
そんなときに頼りになるのが、保温シート(エマージェンシーシート)と、使い捨てカイロです。
保温シートは、軽くて薄く、たたむとポケットサイズに収まります。
体に巻くだけで体温の放出を抑えてくれるので、ひとり1枚ずつ備えておくと安心です。
使い捨てカイロは、貼るタイプと貼らないタイプを組み合わせて。
お腹や腰、背中など、温めるだけで体感温度が変わる部位に使えるよう、いくつかストックしておきましょう。
夏の停電とはまた違う、冬の停電の難しさは「冷え」にあります。
体温をまもる備えがあるだけで、停電の夜の過ごしやすさは、ずいぶんと変わってきます。
おわりに
停電は、いつ起こるかわからないものです。
けれど、それは「いつでも起こりうる」ということでもあり、特別な災害だけのものではありません。
短時間の停電なら、これまでに経験したことのある方も多いと思います。
今日ご紹介した7つのもの ―― LEDランタン、モバイルバッテリー、手回し充電ラジオ、保存水・非常食、カセットコンロ、携帯トイレ、保温シートとカイロ。
すべてを完璧に揃える必要はありません。
ご自身の暮らしの中で、まだ備えていないものがあれば、ひとつずつゆっくり迎え入れてみてください。
備えは、不安から生まれるものではなく、暮らしを大切にする気持ちから生まれるものだと思っています。
ふっと明かりが消えた夜にも、家族で穏やかに過ごせるように。
小さな備えを、少しずつ重ねていけたらと思います。
停電への備えは、防災全体の一部です。
持ち出し用の備えも含めて 見直したい方は「防災リュックの中身、何を入れる?必需品リスト 完全版」もあわせて読んでみてください。
